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治療・対策

うつ病の治療が変わる、血液で見抜く早期発見法

投稿日:2014年4月24日 更新日:


日経新聞の記事より抜粋です。

2014/4/13 日経産業新聞 Editor’s Choice

全国で約100万人の患者がいて、職場でも大きな課題となっているうつ病。
これまで客観的な診断基準が確立されておらず、再発率も高かった。
数値などのデータによる新たな検査法や新薬開発が進む。ビジネスパーソンを守るための最新の取り組みを追った。

今春、東京都港区にある精神科診療所、川村総合診療院を20代半ばの男性会社員が訪れた。

仕事で突然ミスが続き、上司から精神科の受診を勧められたという。

休日は週に1日。仕事が忙しく、日々の食事も満足に取れていなかった。

発症までの経緯と症状から判断すると明らかにうつ病。

だが診断はうつ病ではなく、男
性の能率低下の理由は、不規則な生活による脱水症状だった。

最終的には男性は食事や水分摂取などの生活指導だけで、通常通りの業務が可能になった。

 

■VBと新技術を共同開発

川村総合診療院の川村則行院長がこの男性を「うつ病ではない」と判断したのは、血液中の「エタノールアミンリン酸(EAP)」の数値が正常だったため。

EAPは、川村氏がヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)と共同で開発を進めるバイオマーカーだ。HMTは東証マザーズ上場の慶応大発ベンチャーで、細胞の代謝物の分析を請け負う。

 

うつ病は診断の難しい疾患だ。一般的に医師は、「DSM―4」と呼ばれる国際的な診断基準に照らして問診を行い、診断する。

だが、患者が常に正確な状態を
医師に伝えるとは限らず、客観的なデータがない。

医師の診断能力に依存し、時に臓器に異常が認められる器質的な疾患は見逃されがちだ。

「男性会社員は、通
常の精神科医ならば間違いなくうつ病と診断して薬を投薬するケース」と川村氏は話す。

このバイオマーカーは、川村氏が国立精神・神経センター(当時)に勤務していた2002年ごろに研究を開始。「精神疾患を発症すると免疫力が落ちる。血液内になんらかの問題が出ているはず」と考えてHMTに研究を委託して開発した。

 

だがHMTが通常、代謝物の解析に利用する「キャピラリー電気泳動」という方法ではコストが1例40万円程度かかるほか大量に測定するのは難しかった。

そこでHMTはEAPを「クロマトグラフィー法」と呼ばれる解析方法や酵素を用いて測定できるようにした。

1万円から2万円程度での計測が可能となり、実用化も視野に入った。HMTによるとうつ病を拾い上げる「感度」は80%以上、うつ病でない場合にうつ病と
診断されない「特異度」は95%を超える。

既に川村氏は試験的に約1200人、2500例で計測を実施、実用性に自信を示す。

 

今も精神科の受診に拒否反応を示す人はいる。

血液検査でうつ病の可能性が分かるようになれば、内科医でも早期に診断でき、精神科を紹介できるほか、患者自身も自分の状況を正確に把握できるようになる。

効果が数値で分かるため、抗うつ薬を適切に利用でき、治療期間を短くする効果も期待できる。「EAPでうつ病診療は変わる」と川村氏。

HMTでは今年度よりEAPを試行する医療機関数を増やし、19年をめどに保険収載を目指す。

 

■近赤外線で識別

うつ病を客観的に把握しようという試みはEAPだけではない。

「光トポグラフィー」と呼ばれる手法もある。

センサーのついた帽子のようなものを頭でかぶっ
た状態で「あ」から始まる言葉を一定時間挙げてもらう。

同時に近赤外線を頭皮にあてて脳内の血流の変化を読み取る。そうすると、うつ病や統合失調症など
と、ほかの精神疾患とを識別することができるのが特徴だ。

これまで大学病院を中心に全国26施設で先進医療として行われてきた光トポグラフィーだが、今年4月からは保険収載されて保険診療として認められるようになり、さらなる普及が期待される。

「うつ病の治療薬は統合失調症や双極性障害では使ってはいけない。

薬物以外の治療法も異なるため、光トポグラフィーの持つ意味は大きい」と東京大学精神医学の笠井清登教授は話す。

例えば「うつ病だけれど薬の効果がない」として紹介された患者に光トポグラフィーを行うと、統合失調症を疑われる例も少なくないという。

「統合失調症を疑わなければ、患者から聞き取れない話もある」と笠井教授。

経験豊富な精神科医にとっても、診断の右腕になりつつある。

 

■患者95万人、社内の競争激化

厚生労働省によると、2011年のうつ病の患者数は95万8000人。

1996年には43万3000人で、統計上でみても患者は急速に増えている。

 

もっとも、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター長で、日本うつ病学会理事も務める大野裕氏は「統計上、うつが増えているからといって、うつ病の患者数がそれだけ伸びていると考えるのは早計」と指摘する。

1999年、日本でSSRIと呼ばれる現在主流の抗うつ薬が発売され、広告も出されてうつ病に注目が集まった。それによって、うつ病という言葉が社会で一般化し、これまで精神科の受診をためらっていた人たちが受診するようになったためだ。

ただし、大野氏も企業を中心としてうつ病患者が増えている印象を持っているという。

「地域でも企業でも人間間の関係性が希薄になっている。

特に企業では余剰人員を抱えなくなり、社内での競争激化がうつ病につながっているようだ」(大野氏)

 

現在国会では、企業にメンタルヘルス対策を求める労働安全衛生法の改正案が審議されている。

これまで以上に企業には社員のメンタルヘルスケアに対応することが求められている。

 


 
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